辛いというのはもう少しで幸せになれる証拠(前編)

2009年8月21日(金)



前回会ってからほぼ1ヶ月が経ったわけでありまして。
前期末も無事終了し、私のほうはバイトも落ち着いてくる頃であった。
彼のほうもテストが終わり、夏休みはちょこちょこ話していた気がする。

8月、と言えば思い入れの深いところでもある。私たちにとっては。
目を閉じればまだあの涼やかな夏の日を鮮明に再現することが出来る。
だまのない綺麗な青色に映える白い雲。囁くような風に揺れる青々とした木々。
そこには確かに、隣に彼がいてくれたんだ。
それだけ時間が経っても色褪せないほどの力強さが、この記憶にはあるのだ。
本当の出発を決めた日だもの。忘れられない。忘れたくない。

そう思っているうちに、季節は早くも一周りをしてしまったようだ。

1年という期間を振り返ってみれば、あっという間としか記述出来ない。
最も1年と言っても実際に会えたのはほんのわずかな時間でしかないのだから。
おまけに彼は生き地獄のバイト、私は受験勉強(一応ね)の経緯がある。
忙しさに身を任せていたらいつの間にかこんなに時間が経っていたと言えるかもしんない。



彼「なんか、考え事してたら変態になってしまったwww」

私「(どんなこと考えてるんだよwww)まぁいいんじゃない?」

彼「そんなこと言ったら変になっちゃうw」

私「いいじゃん、変でも。」



…れっきとした朝の会話です。2人とも寝ぼけてないよ。
そんなメールのやり取りをしつつ、早くも準備が整ったので家を出ることに。
残念ながら迎えてくれたのはすっきりとした空間ではなくて、乳白色の重い雲に覆われていた空だった。
(本当に思ってるかは別である。一応ここに記述しておくが。)

会う前の動作はもう前の文章で述べたのとさほど変わらないので省略。(蹴


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私(ちょっと早かったかな…)



仙台駅の地下鉄の改札からちょっと行ったところ。
膨らんだ灰色のリュックをしょった私がそこにいた。
時刻は8時20分。彼との待ち合わせは大体30分。
まぁ、そう考えれば私も随分と落ち着きをもったものだと思う。
前なんて1時間ぐらい早く行ったんだっけか…なんて、1年前にもなる記憶を反芻して笑った。

1年経っても変わるものと変わらないものとがある。
そしてこの会う前のどうしようもないそわそわ感というものは後者にあてはまるであろう。
メールのやり取りは朝から頻繁に続いていて、彼ももうすぐここへやってくるところらしい。
1ヶ月前に会ったばかりなのにな…今更不思議に思いながらも、近くの柱にもたれかかる。

そこは3月に会うことを約束して、私たちが鉢合わせ(?)をした場所でもあった。
流石に記憶に残ったせいなのかは分からないけれど、集合場所はここということになっている。
下手に新たな場所を設定するよりもずっといいやと思ってた。

柱によりかかりながら、小さめのバッグから小説を取り出した。
最近はまってるんだ。本を読むのが。文庫本に目覚めたかもしんない。
と言っても母が買ってきたやつを読んでいるに過ぎないわけだけど。
特に固定してこの作家が好きだというのがないから、買う予定も立てない。
(好きな作家がいても毎回のように買うとは思えないけれど。)

一応開いて読む…けれど、うーんいまいち集中できない。分かってるけど。
手元にある携帯を持つ手がやけに落ち着きがない。
腕時計を見れば、もう約束の時間。このまま現れてもおかしくはない…ね。
服装は事前に彼が教えてくれたのだけれど、流石にもう雰囲気で分かる。

すると、携帯のバイブがメールを知らせてきた。もちろん彼からだ。



彼「会う前にトイレ行ってもいいかな?」



どんな質問だよ、と心の中でつっこんでおく。
いってきなさい的なことをメールで打ち込もうと本を閉じたその時だった。



彼「よっ。」

私「わわっ!」



突然背後からかけられる声。驚く私。
視線を向けた先には、彼が笑って立っていた。
反対側からくるとは思わなかった。油断してたぞ…



私「全く、びっくりしたなぁ…」

彼「ははw …あ、トイレいってくる。」

私「うん。」



会った早々数秒後、彼はトイレへと消えていった。
なんなんだろうこのびみょーな感じは…
表現できない気分のまま、彼の帰りを待つ私。

トイレから戻ってきたのは、それからほんの数分経った頃。
改めて顔を合わせると…いやぁ、まだまだ恥ずかしいですね。
1年経ったのに最初のぎこちなさは健在のようだった。
こういうところが進歩していないから面白い限りでございます。



彼「で、行くの?」

私「うん。すいてるから問題ないと思う。」

彼「じゃあ行こうか。」



どこに行くかと言うと、地下鉄に乗ってとあるデパートへ。
今日の目的は映画観賞である。まぁ、本当は今日じゃなかったんだけどね。
一応目玉…なのかは知らないけど、松島へ観光に行こうという日にしていたんだ。
だけど、天気予報を見て今日が雨だと知ったので…最終日に変更。
やっぱり晴れている時に行きたいよねってことになった。当たり前か…

私はカードがあるからいいけれど、彼はちゃんと切符を購入。
なんだかんだで大阪でも宮城でもそれなりに電車に乗る機会はあると思っている。
そんな中で毎回切符を見たらすることと言えば…
切符に書いてある4ケタの数字を四則演算でどうやって10にするかを考えること。
うーん、こういう時自分が理系だって思っちゃうよね…
これがなかなか楽しいし、頭の体操になる。キミも機会があったらやってみてね。(何

まぁその時の数字で出来たかどうかだなんて覚えてないわけですがね。(´・ω・`)
そんな感じで楽しみながら(?)地下鉄に乗り、目的地へと向かっていく。
当たり前であるが、仙台から離れると利用人数が少なくなるのは仕様だと思う。
その分ゆっくり座れて快適だからいいんですけどね。

ほどほどに会話をしつつ、数分で目的の駅に到着。
デパートは地下鉄の駅を上がったところのすぐ傍に位置している。
今日が初めてではないのだけれど、何分自分の住んでいるところが便利になってしまったせいで足が遠くなっていた。
その駅で降りるのも久しぶりだったわけだけど、人がいない…
…まぁ平日の朝だし、しょうがないよね。なんて、誰に言うわけでもない言いわけをこしらえていた。

出迎えてくれた空はどんよりと曇っていた。もうじき雨の降りそうな予感である。
だからと言って嫌なわけではなく、むしろ予定を変えたことについて称賛するほどだった。
このぐらいの移動距離なら傘もあるし、心配することもないんだけどね。

来た時間が早すぎたせいで、映画館はまだ開いていない。
こうして早めの時間に来てしまうのも私たちの性格というか、そんな感じのものなのかもしんない。
こういうデパートなんだよ的な感じでデパート沿いに歩いてみる。特に面白いものなんてないけど。
途中、夜行バスで来たせいで睡眠不足な彼がベンチに座って休憩してた。
そろそろバスでも寝れるような対策を考えた方がいいんじゃないかと思ったりして。
でもこればかりは性分らしいので、仕方ないのかな…

半周ぐらいしたところで、何やらお店は空いているような予感がしたので入ってみる。
見回るだけでも面白そうだよね。そういうもんです、私たちは。
お店に入ると、右手に大きなスーパーが見えた。24時間営業らしいよ。素晴らしいね。
彼は再び入り口付近のベンチに腰掛けたけどw
眠そうな彼を扇子を使ってくすぐって遊ぶ私。
しかし、彼はあまり好いてはくれないみたいです。
私の扇子を取り上げて、1言。



彼「まだ朝なんだよ?」



…じゃあいつならいいんだろう。
その疑問は口に出してはいないけれども。

彼もそこそこ休めた(わけないけどそういうことにする)ので、食品売り場をぐるっと回ってみた。
彼が将来のためにうんぬんとか言ってた。要するに1人暮らしをする場合のお話。
確かに、1人暮らしの人はこういうのも考えなきゃいけないんだよな…
改めて自宅生の無力さを知った瞬間だった。
どれがどの値段で売られてて…大体把握してるだけでもかっこいいかもしんない。
意味もなくお惣菜やお菓子や飲み物やらを見回った。
見ているだけでも何かしら会話は出来る。それが今でも、不思議。何度も言ってることだけど。

食品売り場を後にしても、まだまだ時間は余ってた。
しょうがないので空いている2階の売り場を探索することに。

エスカレータで登って、2階に到着。主に服を売っているところだった。
服と言うのも個性を出すのには1つの要因としてあげられるものだ。
やっぱりそれぞれに味があるというか、特色が出る感じがなんとも言えない。
もちろん誰かさんも例に漏れずだけど…ね…
安い服を見つけて買おうかちょっと悩む彼を見て、そう結論づける私であった。

お店が開いて間もない時間帯のせいで、私たち以外のお客さんの姿は見なかった気がする。
そういうところにいるだけでも非常に不思議な気分になるものだ。
お店に来ているのに本当にそうなのかと疑ってしまうところがある。
適当にぶらぶら歩いても、2人ぐらい従業員さんを見たぐらいだった。

大方のところは歩いたので、再び休憩。今度はエスカレータ近くの広場っぽいところ。
丁度甲子園の時期だったので、確かそのテレビがやってたはず。…ごめん、あまり興味はないかもしんない。
それよりも、2人してある女の子に目が止まっていた。その子の行動を見てたりだとか…ありえない妄想までしてた。
今度は近くのゲームコーナーで遊んでいる子を見ていた時の会話。



私「遊んでるねぇ…」

彼「一緒に遊んできたらいいじゃんw」

私「なんでそうなるの?」

彼「だって似合ってるじゃん?」

私「…それ、どういう意味(´・ω・`)?」



時間が経つにつれていじられる度合いが上がってきた気がする。
今に始まったことじゃないけれども。

一旦座ってしまうと立ちたくなくなってしまうのは仕様なのかもしれない。
再び歩きだすこともなく、彼と私はそこで座りながら会話を楽しんでいた。
(主にいじられているだけですね、知ってます。)
時間もいい頃になったので、本当の目的地である
映画館へと向かう。

今いる場所とは少し離れた建物の中にあるので、1度外に出なければならない。
さっき入ってきたところに戻って再び出た。
外はいつの間にか雨がぱらぱらと舞っていた。予想通りである。
ただ、移動距離もそんなにないので傘を差すのはためらった。
折りたたみだもんね。このぐらいだったら当たったって気にはしない。

なるべく屋根づたいで移動する。道路を渡る時には少々雨を受けた。そんなに強くなくってよかったよ。
映画館のある建物に移動し、そこからはエレベータを使った。
そういやこのエレベータ使ったことあるなぁ…なんて、おぼろげな記憶と共に乗り込んだ。

エレベータが開くと、もうそこからが映画館というちょっと面白い光景である。
事前に映画の目星は決めていたけれども、その場で何を見ようか決めることになるのは目に見えてたのかもしれない。
彼は何でもいいみたいなので、私が前に話していた映画を見ることにした。
午前中の最初の映画ということで、チケット代がお得になっていた。彼が結構喜んでた気がするw

映画開始まで何故か1時間ぐらいあったので、映画館の中にあったベンチ(座る機会が今回多い)に座ってぐだる。
正面あたりに映画予告のいろいろなものがテレビで流れてて、それについていろいろしゃべってた。
途中、彼の携帯に自動車学校の合宿についての電話がかかってきてなんとやら。

その合宿場所というのが山形なのだから、面白くなってくるものだ。
私も実は合宿に山形を選んでいた。が、教習所はお互い別のところ。
一時期、一緒にいれば2週間ぐらい共にできるじゃないかとか盛り上がっていたのだが、
それもちょっと世の中的に見ればどうなんだろうということでおじゃんになってしまったわけだ。
調子乗るのはまた違う機会の時がいいんだろうね。タイミングは知らないけれど…

お決まりと言えばお決まりで、彼は夜行バスの中で今回もそこまで寝れなかったらしい。
目をつぶってこちらによりかかろうとする彼を私は制していた。
これこそ、さっきの言葉を返そうかと思った場面でもある。
彼は心なしか残念そうにしていた。私の本心じゃないんだよ、うん。

1時間経って、映画を見る部屋の中へ。座ってみると改めていい席なのが理解できる。
人もそんなに入っていなかった。少なくとも私たちの列に誰かが座ることはなかったはず。
今回見る映画の内容をちょこちょこ話して、放映の時間を待っていた。

映画が始まると、そっちに夢中。そりゃそうだ。
なかなか面白い。これ、前作があるんだけど見ていなくてもなかなか楽しめる内容だ。
キスシーンはちょっとどっきり。なんか、こう、彼氏と一緒に見てると妙に意識が違う感じがする。
たまに横を向くと彼も気がついてくれて、笑ってくれた。
私の手を取ってそのまま繋いでたりとかしたね。今思えばなんという…(苦笑)

1時間40分ほどの映画が終わり、彼と私は立ち上がる。
なかなか楽しめたみたいだった。よかった…チョイスは間違ってなかったみたい。

映画館を出て、そのままデパートのほうへと行ってみる。
時間はもうすでに開店を越していたので、どのお店も開いていた。
いろいろ見て回ったね。アクセサリー、服、雑貨…
デパートは見るだけでも結構楽しいものだから、お得だと思う。
(と、優柔不断なだけのおいらがぼやいてみる。)

時刻はお昼まっただ中。
本屋さんを経由しつつ(勉強に関係あるようなのしか見ない私たちって…)フードコート的な場所に着いた。
何たべよっかー、何でもいいよー…いつも通りの会話ですね、分かります。
お腹がすいているとなんでもおいしそうに見えてしまうマジック。もうなんでもいいから食べたいな、なんて。
今回は中華料理のお店に入ってみることにした。
前にここに友達と食べに来たことがあったのを話したからなんだけどね。
その時は丁度彼と見た映画の前作を見ていたことを思い出す。なんか、懐かしいね。
お店の人からドリンクバーの無料券ももらったしね。
ただ、すぐには入らずもうちょっと時間を置いてから来ようということになった。

見ていなかったお店を眺めたりだとか、途中ベンチで休憩したりだとか…(またかい
お昼食べたら買い物して帰ろうか。そんな話になって同意。
彼も眠いみたいだったし、今日の目的は一応達成したもんね。

少し時間を潰したところで、先ほどのお店に行ってご飯を食べることに。
彼は麻婆豆腐を、私は油林鳥(中国風の鳥の唐揚げ)を頼んだ。
麻婆豆腐がやたらと辛かったらしい。
一口くれるといったので、もらおうとしたら口に運ばれそうになったのを慌てて止めた。
嫌なわけじゃない。けど、人がいる前でどうしても出来なかった…(´・ω・`)
むしろそれを急にやろうとしてくる彼のほうにびっくりしたぐらいだけども。

ご飯はお腹いっぱいいただきました。ごちそうさまですっ。
今日は夜ご飯いらないねー、なんて話していた。
(生活的にどうなんだろうっていう考えはもうどっかに行きました。)

お店を後にして、最初に行った食品売り場へと足を進めた。
彼がお酒を買いたいと言ったのでw
もう誕生日を越して成人になったので、堂々とお酒が買えるんですね。

時刻は2時半ごろ。今行けば大体ホテルのチェックイン時間と被る。
ホテルに帰っても何もすることはないけど、行ったら行ったでなんとかなるだろうという魂胆。
外に出てみたら、またしても雲行きが怪しかった。雨はやんでたけど。
これは駅前行ったら雨かもしんないなぁ…ちょっぴり憂鬱。

地下鉄に乗って仙台駅に戻ってくる。
ホテルに行くのに一番都合のいい道を選んで、外に出てみると…
…あれ、結構雨降ってるじゃないか。
予報で分かっていたとは言っても気が進まないものは気が進まないものでして。
お互い折り畳み傘を開いて、ホテルへの道を歩いて行った。
歩いていて特に面白いこともなかった…はず。
結構雨が強くって濡れたのが気になったくらい?あ、どうでもよかった…

歩くこと10分ぐらい。ホテルに到着。
うん、前と変わってない。当たり前だけど。
申告していた時間より大分早かったが、チェックインは問題なく出来た(らしい)。

鍵を受け取ってお部屋に向かう。
今回は左側にベッドがあるところだった。
3月は真正面だったことを覚えている。

荷物を置いてベッドでぐだぐだ。テレビをつけてみた。
なんか、大食いのテレビ番組だった。彼は前に1度見たことがあるらしい。
女の人たちが頑張ってラーメンを頬張っているのを、同じ人間とは思えないと言う目で見てた。
あの大量の麺はどこに収容されるのだろうか…
とにもかくにも、自分が通常の胃袋で収まっていることに感謝しておこうと思う。

前後かは忘れたけど、甲子園も若干見てた。
自分より年下(といっても1年だけど)とは思えないほどのオーラ。
こういう風に何かに青春を捧げると言うのも悪くはないのかもしれないね。
あぁ、私の青春はいったいどこへ…(何

そうやって寝転んだりしていると、案の定接触回数が増えてくる。
寝る体制で抱きしめられると安心して、そのままでいたくなっちゃって。
ぎゅって寄り添うとあっちも込める力が強くなるのが分かる。
今まで寂しかった分を埋め合わせているのか、これからの寂しさを紛らわしているのか。
どっちなのかなんてもうそんなものは意味をなさなくなってしまうというものだ。



・
・
・



私「う…ん…」


意識が戻ったのは、それからどのくらい経った頃なのだろう。
外はもうすでに真っ暗になっている。
やけに意識の冴えた頭を上げて、今の状況を整理してると…
彼も起きたみたいだ。



彼「あれ…寝ちゃった?」

私「そうだねぇ…」



こういう風にお構いなしというところが、幸か不幸か…
とりあえず、お腹は空いていなかったのでこのままお風呂入って寝ることになった。
関係無いけれど、後にお風呂に入るとちょっと寂しい気分になったりならなかったり…(笑)

何時間か寝たハズなのに、思いのほか早くに寝れたような気がする。(主に彼が)
あぁ、どうして会ってる時は時間が経つのがこんなにも早いのか…
嘆く間もなく、時間は明日に移り変わっていく…


次回予告的なもの。

―「なんか、変な感じだね。」

     
          「分かってたけど。」

   「辛い…なんてね。」


―大学潜入、動物園。そして、胸の内から溢れだす想い…



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*ぼやき
(後ほど記入)
     









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