自分自身のことは自分が一番よく分かっているようでそうでもない

誕生日にチャットが飛んできて以来、彼からちょこちょこと話しかけられるようになった。
1度だけ私のラジオでゲストとして出演してもらったこともあったんだよね。ちょうどこの時期。
(本人覚えてないんだってさ…物理の話題で結構盛り上がってたんだけど…)
声の第一印象?うーん、彼が申告してくれた通り、高めの声だったかな。

流石に彼も受験生だったから、毎日チャットが飛んでくることはなかった。
短時間で勉強の話題。これがメイン。
どうも私たちの会話に勉強ネタはつきものらしい…
こんなの恋人同士でするもんかなぁと疑問に(もちろん今でも)…ま、いいんだけどさ。
そんな状態で1月と2月は過ぎてしまったと思います。

3月に入ってからはとんでもないことになりましら。
よくもまぁ飽きずに毎日彼とチャットしてましたとも。
毎日何時間やっていたんだろう…
彼はもう卒業したから1日中暇だったし(まぁ部活で顔を出してたけれども)、
私のほうも午前授業だったから、午後からはパソコンの前にいることができたんです。
時間はお互いある状態だったわけですが…問題はそこじゃないですよね。
そう、時間があってもそのぐらい話すネタがあるのかどうかという問題。
…これがあったんだな。
お互い知らない部分も沢山あったから、その辺りには困らなかったんだと思う。
それにしてはよくしゃべってたよなぁ…勉強ネタから時報ネタから自分たちのことまで…
チャットが進むわ進むわで、とんでもない過去ログの量ですよ…ええ。
ちなみに2009年3月22日分までコピペして保存してみたところ…なんと容量は3250KBっ!!
1文字は2Bだから…文字に換算すると162万5千文字って感じでしょうか。
それがどのくらいの量かは知りません…
あ、行に換算すると63000行です。あんまり分からないけれど一応…ね。(苦笑)
この頃通話するほどの仲にもなっていて、夜中まで付き合わせてしまうこともあったっけ…

そうやって特に何も考えずにチャットや通話を楽しんでいた。
うん、本当に楽しかったと思う。何故か分からない。
こんなに長く話してくれる人もいなかったわけだし、
何よりそれを自分でも望んでいたことには驚いた。
まぁその話はまた今度にすることにして…

さぁ、だけど悠長にいつまでも楽しんでいるだけの場合じゃない。
彼の受験が終わった。つまり次は私の番ってこと。
4月からパソコンを自重しようとしていた私に、ある時彼は言った。






彼「正直www3月終わったらwwまかちゃんとさようならしようかとも思った 思ってる」




(え…)






彼「大学で見つけたほうが^−^ 場所も近いし^−^遊びやすいし^−^」



彼「 会って話せるし^−^」






ズキン、別にそんな音を何かが発したわけではない。
彼の発言を見た瞬間、そんな効果音が似合う感じで自分の心臓は跳ねたんだと思う。
逃れられなさそうな苦しみを私が感じていた。
チャットは彼の発言で埋まっていく。
それを目で追いながらも、追いたくないという衝動に駆られていた。
頭がぼーっとする。






(あれ……)






おかしい、おかしい。自分がよく分かってる。いや、ごめんやっぱり分からないかも。
でも…それでもそんなことあるわけない。そんなことあってはいけないんだ。
なんとなく悔しいような気分でもあり、あーそうなのかと気づいてしまった瞬間でもあった。
ぐっと拳を握り締める。少し手が湿って熱い。

否定してやりたかった。自分の中にいつの間にかあった感情を。
そんなことは知ってたんだと思う。少し前から、薄々自分では意識していた。
滅茶苦茶にして何でもいいから押し込んで、とりあえずはやり過ごそうと思ってた。
いつもやっていたことだったのに、その時は何故か出来なかった。
心が叫んでいたんだ。






(連絡を切るなんて…嫌だ)





自分でもびっくりするぐらいの力強い主張。
隅で気づかれないように伺っていた何かが急に顔を出したのだ。
卑怯だ、これは何でも不意打ちすぎやしないか。
自分自身のことで自分自身が苦しんでいる。
罠にでもかかったような錯覚。





(私…なんで連絡を切るのをこんなに嫌がってるの…?)





ふと、パソコンの画面を見てそれとなく問いかける。
もちろん答えなんてかえってくるわけがない。
ただそこにはすっかり見慣れた画面とチャットの文字の羅列があるのみ。
答えが出せないままで、カーソルは点滅を繰り返しているだけだった。

パソコンの向こうにいる彼は…どうなんだろう。
本当は連絡を切りたいんじゃ?





一抹の不安がよぎる。もしそうだとしたら…
このまま終わらせてしまったほうが楽なのかもしれない。
彼も、そして私も…





―だけど、その不安は必要なかったみたいだ。






彼「本気で言うわ まかちゃんみたいに素的な人と出会える気がしないんだ」


彼「たったww数ヶ月でwwここまで判断していいのか不明だが^−^;;」






これが彼の本音だとしたら・・・嬉しいことだけど。
厳しい道のりだっていうのも彼が訴えてくれた。
そんなの分かってる。分かってるけど…

たかが数分、されど数分。
私の体の全ての細胞はただそれだけに意識を注いでいた。
やがて、静かな部屋にタイプ音だけがこだまする。






私「私だって、中途半端な気持ちで連絡取り合おうだなんて思ってないです・・・」

私「だけど、今後影さんが苦しむぐらいだったら連絡切ったほうがマシだと思うのかな・・・よくわからない・・・」






考えついた結論はそれだった。うん、つまり本音。建前の無い、私の本当の気持ち。
彼は今連絡切ったほうが苦しむ確率は高いだろう、そう言っていた。
そして、私が一番欲しかった一言が画面に現れる。






彼「もうwwwメールしようぜ(((」






体の力が抜けた気がした。






私「喜んでww」






この話題のチャットが終わってホッとした自分に気が付いたのは間もなくしてのこと。
たった数分の出来事のはずだったのに、そうとは思えないほど気が張ってたみたいだ。
















(認めるしか、ないのかなぁ…)




また他愛の無い話に戻りつつあるチャットに浸りながら、事実を認められない自分がそこにいた。
否定しようとは思わない。なくしてしまおうとは思わない。
確信しているのか、そうでないのかも…よく分からなかったんじゃないのかな。
























―顔も見たことの無い、会ったことの無い彼が…好きだってこと


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事実は小説よりも奇なり

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