甘えたい時に甘えておけ、もったいないから(前編)

2009年 3月26日




私「はぁ…」



流れる水音を後に、私はドアの前でため息をつく。
まさかこんな日によって…くるとは…
朝見た光景といい、タイミングといい…あんまりいい気はしない。
それでも、今日起こることを考えたら払拭されてしまうんだから…すごい。

8月12日に会ってから約7カ月の月日が流れていることになる。
あの日から待ち遠しくてたまらなかった日が、ついに訪れた。
長かったようで、でも当日を迎えてしまうと意外とあっけなかったような気もして。
でも、もう何も苦しまなくていいんだよね。

受験を乗り越え、大学に受かった私は最低限度のことを成し遂げた。
もう何も気兼ねなどすることもない。



 ―そして再び、彼と巡り合うことになる。



集合は朝の9時。
どうしてそうなったかは…なんでだっけかな。
8時だと早いだろって彼に言われた記憶がある。別にいいのにな。
バスが到着してから1時間もあるみたいだし、どうするんだろう。
そこは聞かなかったけれど、とりあえず歩き回って時間をつぶすんだろうなとは思ってた。
分かったとは表向き了承していたものの、あぁきっと早く出てしまうんだろうなって苦笑い。
もちろん彼はそんなこと知らない。あくまでも心の中での話だもの。

当日、もちろんのことながら早くに目が覚める。
こんな気分になったのは最初の時以来だろうか。
あの時と同じように、実感もない。緊張は…うん、そこまでない。
理屈で分析していても、実際の気分は明らかに意識していた。
人間って難しい…

丁度、駅で済ませる用事があったので大分早くに家を出た。
この分だと集合時間8時でも間に合う感じ。でも彼はそんなこと知らない。
ま、着いてから決めようかな、なんてお気楽に考える私。
これも一種のサプライズ?別に嬉しいこととか用意してないけどさ。

あの時と同じ気持ちでバスに乗り、地下鉄に揺られ…
あぁ、やっぱり緊張してきたじゃないか。さっきまで大丈夫だと思ったのに…
仙台駅、仙台駅という機械的なアナウンスに背中を押された人ごみの中での出来事。
彼からのメールでもう仙台駅に到着したという情報は頭の中にインプットされている。
…もしや、ばったりあったりするまいなっ!!?心臓に悪そう…
もちろんそれはそれでいいんだけど、やっぱり、こう、心の準備は必要なんだよっ。
誰に言うわけでもない。なんだろう、この自分への戒めは…
なんてみじめになりながら、辺りを少し伺いながら歩みを進めた。

仙台駅での用事は早々に終わった。まぁ、元々時間のかかることじゃない。
分かっていて早く来たんだ。何かに押されて…半年経っても変わらないものは変わらないんだね。
さて、どうしようか…とりあえず戻ろう。
ちょこちょことメールのやり取りはしていて、地下鉄のある出口が集合場所となったから。
まぁ少しぐらい長く待ったって構いはしない。
…と言っても、そろそろ趣旨を伝えておかないとあれかもしんない。あれって知らないけど。

待ち合わせ場所…らしいところまで行くと、すかさずメール。
ここでやっとこっちも仙台駅にいるということを知らせた。
これで慌ててこられたら申し訳ないな…と思いつつも、あまりそうは思ってない。(蹴り
携帯を閉じ、付近をうろつく私の視線が釘付けになった。
心臓がドクンと一回波打つのを感じながら。

見覚えのある人が携帯を見て歩いている…あれっ…
見間違えるはずはなかった。彼だ、彼がいる。
声をかける前に、あっちが頭を上げた。こちらを見る。
携帯を持った手を挙げて振ってみる。彼の眼が一瞬見開かれているかのようだった。
一瞬、彼の時が止まっているのが分かる。思わず笑った。



私「なんで固まってるのw?」



その一言で、彼はやっと、あぁっ!と思い出したかのような顔をして近づいてきた。
半年以上ぶりに再開。特に変わったところは見受けられなかったけど、何分久しぶりなので恥ずかしい。
下手したら初めてあった時よりも恥ずかしい。いったいどういうことだ。こっちが聞きたい。
いくら関係が恋人同士になっても、やることは前と一緒なもので…
それに不満と言うわけではないんだけど、そのせいで面と向かって会うというのになれる気がしない。
今のところそういう予定もないのが困ったところだ。会う度にリセットされていくような…
(その割に関係がだいぶステップアップするところが面白い。)
一応、だ。初めて恋人同士になって会ったわけだから…まぁ初デートとでもいうものなのだろう。
気分的には前回だってそう違いはない。名目の話だ、名目の。



彼「待ち合わせの時間よりだいぶ早いよね?」

私「そうだね、ちょっと用事があったもんだからw」



用事があったのは本当の話だ。嘘ではない。ここでフォローは入れておく。
さぁ、久しぶりすぎて目も合わせられないぞ。インターネットでNo.1再生数を獲得した曲を連想させる。
そんなどうでもいい情報はおいておくとして、まるで初対面のようにがちがちになりながらも、
ちょっと荷物が邪魔だということだったからロッカーへと向かうことにした。
並んで歩くのも半年ぶりであるから、どうしたらいいんだろう…とかどうでもいいことで迷ってたりする。
そういうもんですよね。やたらと神経質になるというか。

ロッカーに荷物を預ける時に先手を打たれてお金を出された。(´・ω・`)
油断大敵?まぁ…いいところは見せてあげるべきなのかなw
あまり抵抗はせずにお礼を言っておいた。満更でもなさそうだから、よかったのかもしれない。

さぁ、かと言って時刻はまだ8時過ぎ。予定していたお店なんて開いているわけがない。
最低でも2時間はどこかで時間を潰さなければいけないわけだけど…うーん。
どうするの?どうしよっか。多分1番したやり取りがこれ。
多分機械的。それでいて飽きない。嫌悪感もない。本当に不思議だなぁ…
することもないから適当に歩き回ってみる。
仙台駅の中から、彼が高速バスを降りた場所やら、駅地下やら…
駅の中を制覇したところで、アーケード街に行ってみることに。
流石に朝早くだったから、毎日賑わいを見せる場所も静かな空間だ。
ちょこちょこと人は歩いている。まぁゴーストタウンとかそんなんじゃないからね。
足は当然のごとく動くわけだけど、口もそれに続いて動いていた。
よくしゃべれるよなー…他人事のように感心してしまう。
もちろんいい意味で緊張はしていたけど、話しやすいことに変わりはない。
最初に会った時よりも大分早い段階で落ち着いた気がする。

ここで、朝ご飯と称して某ファーストフード店に。(蹴
私と1時間早く会ってしまったせいで、朝ご飯を食べる時間がなくなったんです。
これは申し訳ない…今度は本当に思っているよ。(´・ω・`)
彼は気にしていなかったようだけども…
ご飯を食べる彼を横目で見つつ、ここでも来たかというように○△兄とのメールを進める。
前述はしなかったが、駅内をうろついている時から○△兄とのメールは始まっていた。
2人して面白がって返信しているから太刀が悪い。だって面白いんだもん。ネタになるんだもん。
と、からかわれている事実を決して彼は知ることはないのだろう…南無阿弥陀仏。…あ、違った。

朝ご飯も上々、良い時間帯になってきたので駅前まで戻ることに。
お店が開けばぶらぶら出来るし、きっとネタになるものも置いてあるから退屈はしないはずっ。
…元々の予定がこれっていうのもどうなんでしょう。楽しんでるからいっか。
再び歩くアーケードは少しずつ活気が出てきていたような気がした。
途中、ニコニコ動画だっ!とかカラオケ安いっ!とか言って写真を撮っていた。
こっちのカラオケはなんでも安いんだとか何とか。3倍近く違うらしい…
…これって、仙台は田舎ってことなのかな。安いなら安いでいいんだけれども。

駅前についたのは10時ちょい過ぎ。すごくいい時間に着けたと思う。
最初は高くて有名なデパートへ。有名かどうかなんて知らない。でも高いことは知っている。
彼が店の雰囲気についていけてなかった。そして私も。
2人して何かに酔っていたんだと思う。もちろんこれは悪い意味で、だと思う。
安易にこんなところに来るもんじゃないです…いやはや。
どうも彼は今回も○△兄にプロデュースされたみたいで…
それが私の服でも買ってあげなさい的なものだったみたい。
でもこんな状態じゃ服どころじゃないだろう。そのうち服に拒絶反応でも起こすんじゃないかな。
例え大丈夫だったとしても、私の態度は一貫していいからwwと、止めるであろう。
もちろんこの時も例外じゃない。彼もそこまで咎めたりはしなかったから助かった。

2人してあわわわわ…と、意味もなく焦ったデパートを去り、今度は雑貨店へ。
とりあえず全部歩き回ってみようということになり、探索スタート。
途中のエスカレーターで手をぎゅっと握ってみたけど、あまりに恥ずかしくって離した。
初めて会った時はそんなことなかったのになぁ…
自分で離していて残念だと思ってしまった。何だろうこの矛盾は…
雑貨店は面白いものがいっぱいだね。特にネタ商品とか。
他にも家具とか食器とか、寝具だったりとか…もふもふしたものは神だと思う。(何
写真立てのコーナーでふと立ち止まった。
会う前のスカイプで、何かおそろいのものでも買おうか、なんて話になっていた。
(一方的に彼が私の分までどうたらという話をして、私が拒否してたような…)
写真立てもいろいろあるんだねぇ。なんて暢気な会話をする。
結局結論からいえば買わなかったんだけどねっ。
きっとそのうちに買いますさ。何かしらは、ね…

階を重ねていくと、まぁありがちなネタ商品がおいてあるフロアに来た。
コスプレセットみたいなのを指差して、着ないの?と彼に笑って言われた…
(むしろそれがインパクト強くって忘れていない。)
ちょこちょこと回って、ふと私が携帯のストラップだか何だかを見ている時だった。
丁度彼に後ろ向きに立っていた状態。彼が、私の後ろから抱きついた。
一瞬ぎゅっとして、ぱっと離した。えっ、って思って彼を見る。ちょっと恥ずかしそう。
誰にも見られなかったというのは気にしていないけど、心臓がうるさくなったきっかけになる。
そろそろ行こうか、とエレベーターを使って降り、雑貨店を後にする。

店を出た後、こんなに恥ずかしいと思うものだっけ?なんて言っていた。
手をつなぐだけで、少し抱きしめられただけで明らかにドキドキしてる。
それは彼も同じのようで、そして同じことを考えていたらしい。どこまで似た者同士なんだろう。

今度は前に来たデパートへ行ってみた。前に、というのは別れ際の夕方のこと。
時間をもてあそんでいたから、なんとなく入ったんだよね。

もうこうなったらどこにでも行く。ぶらぶらしながらしゃべるのが本当に楽しい。
お昼御飯はこの時も無視でした。不思議とあんまりお腹すかないんだよ、私は。
きっと別なことでお腹がいっぱいなんです、精いっぱいなんです。
まぁ、その分晩御飯が豪華w?だからいいんです。
デパートに入ってすぐ、私は彼のジャンパーのすそをつかんだ。


(誤解を招きそうなので中略)←


気のせいなのかそうじゃないのか、私の意図を汲み取っていたのか。
分からないけど、私と彼の手が繋がれた。
いざやってみると、やっぱり恥ずかしい。でも、今度は離さない。
そうやって前踏の建物をめぐってた。
メインは服やアクセサリー類だったけれども、一角には勉強系のコーナーが…
立ち止まってやたらにいろいろいじっていた。理系学生に興味あるものだったから。
こういうところ全然変わらない。

一通りまわったところで、今度はどこにいこうという話になる。
そろそろ歩きまわるのも疲れてしまったので、どこか休める場所がいいね。
そんなわけで、カラオケにいくことになった。安いし個室だし。(後者がポイント?)

デパート向こうの明るい空に雪が舞っている。その中を2人して歩みを進めた。
日差しに白い雪がきらきらしていてきれいだった。若干寒いけどっ。

最初に行こうとしていたところが一杯そうだったので、2件目のほうへ行くことに。
そこでも若干待ったけど、そんなに苦痛じゃなかった。
彼と話していたわけじゃないのにどうしてなんだろうね。
やがて名前が呼ばれて、部屋に通された。個室は2人にしては無駄に広い。
カラオケに来たわけじゃない。個室がただ単に欲しかっただけ?
彼も私も特に歌うそぶりも見せず、とりあえずBGM代わりに何か入れてみた。
彼が適当に番号を押しても曲が入るもんだから面白かったね。

そのうちに怪しい雰囲気になる。薄暗い個室に奏でるメロディ。
少し離れて座っていたはずだったのに、その距離はすぐに0になる。
彼の腕をぎゅっとつかんで、肩に頭をもたれて目をつぶる。
半年の間、感じたくてたまらなかった暖かさが全身を覆っていく。
言いようのない幸福感だった。恥ずかしかったけど、何故か離れることが出来ない。
若干ここらへんは偶然入れた曲が空気読み過ぎてて笑えたw



彼「膝の上にくればいいよ。」

私「いやいや、重いからね?」

彼「絶対そんなことないだろw」



そうかな…いや、でも…なんて葛藤をしつつ、彼に導かれて膝の上に座る。
丁度向かい合った形で、私が彼の膝の上に馬乗りになる感じで。
すとんと体重を下すのが怖くって、若干足で支えていた。
途中で全体重をかけても、彼は重くないと余裕の表情。…ワタシヨリカルイクセニ…
男の子は強いなぁ…(´・ω・`)

流石にもったいないので1曲歌う。チョイスは知るかっ、という感じ。
微妙に手を抜いたのに点数は上々。これがいつものカラオケで出てればいいのに…

そのままお互いのぬくもりを確かめあっていたら、時間なんてあっという間。
カウンターからのコールが10分前を知らせる。
電話機をがちゃりとおいて、心の中でため息をついた。
そんなの分かっていたことなんだけど、やはり時間が恨めしく思えた。
普通の電話でさえ時間を忘れてしまうんだもの。会った時なんて尚更。

残りの僅かな時間もずっとひっついていた。
1回触れてしまうと駄目なことは知っている。もう、離れられない。
彼がじっと私を見つめる。ゆらゆらと、蜃気楼の如くにそれは見えた。
あぁ、なんか変な気分だ…見返している気さえしない。
そのうちに彼が私に近づく、そのまま唇に軽く何か触れた。― 彼の唇、だ。
2回目のキスは彼からで、した彼もされた私も僅かながら止まった時を感じたに違いない。
もうちょっと余韻に浸りたかったけど…時間だね。行かなくちゃ…

カラオケから出て午後4時半ぐらい。ちょっと早いけど、晩御飯を食べることに。
食べる場所は前牛タンがあった地下街のどこかに自然と決まる。
何食べようか、という話になって、そういえばどこかのオムライスがおいしそうだった…
なんて話が出たので、そこのお店に決定。お腹すくとどこでもおいしそうに見えます。

近くに座っていた外国人の人の会話をひそかにリスニングしたりだとか、
彼がアンケートを書くためにあるボールペンが壊れてると文句を言ったりだとか、
ウェイターの人が見張っているだとか、まぁよくも面白いことがおきる。
料理もおいしかった。私はオムライスで、彼がステーキだったっけかな。
ご飯を食べる前に、私はずっと持っていた小さな紙袋を彼に差し出した。
本当はロッカーと一緒に入れておく予定だったんだけど、すっかり忘れてた。
彼もそのことには気が付いていたらしいが、ねだるわけにもいかず…まぁそうだよね。

時間もいい頃。予定していた展望台に行くことにした。
何ヶ月か前に1回だけ用事があって行ったことがあった。
その時は広大なビルの群れを見るにとどまって残念に思ったことがある。
きっと夜に来たらすごいんだろうなって、いつか見に行きたいと思っていた。

既に暖かくないお互いの手を繋いで、展望台に向かう。
3月というけれど、仙台はまだまだ寒い。彼に何度も恰好が寒そうだって言われたっけ。
彼も彼で防備しすぎのような気がするw 足して2で割れば丁度いいかな?

展望台へ向かうエレベーターの中で、自分の体がふわりと上がる。
地上がだんだんと遠ざかっていくのが窓の外から見えた。
高いところからを下を見るのは怖いので、この辺にしておこう。
やがて屋上についたことを知らせるチャイムが鳴った。

展望台からの景色は驚くほどに奇麗だった。予想以上の光景だ。
彼はデジカメで収めようと頑張っていたね。
人工的な光はそれほど好きではないけれど、あの夜景は心から奇麗だと思えた。
間近に夜景を眺めた後、展望台に設置してあるベンチに2人して腰かけた。

彼が私の紙袋から手紙を取り出した。読んでいい?と聞く。
うん、いいよ。読むまで待ってるから。そう言ってベンチから立ち上がる。
なんとなく手紙を見る彼を眺めるのは恥ずかしかったに違いなかった。
後ろから手紙を読み終えた彼の声が聞こえたから、すぐに戻ったけど。

しばらく、2人してくっつきあってのんびりと雑談をしていた。
うーん、なかなかロマンティック。やっと恋人らしいことが出来たのかな。
今までがそうじゃなさすぎたんですね、スミマセン。こういうのもたまにはありだよね。

あっという間にホテルへ向かう時間になった。
もうちょっと居たいという気持ちを抑え、立ち上がる。
別にここで別れるわけではないことを知っていてもそう思ってしまうものなのです。
帰りのエレベーターは2人のために動いてくれた。
急になんだか恋しくなって、彼に抱きつく。彼は応えてくれた。
自分のしたいことが出来るって、こんなに嬉しいことなんだね。

少し離れたホテルへの道は相変わらず寒かった。
それでも当たり前のように手を繋ぎ、当たり前のように足を進める。
彼が途中でコンビニに寄って***とお菓子を購入。
…*****とはつっこまない。飲むんだったら飲めばいいさっ。(誤解をry中略)

案の定ホテルについたのは予定していた時間よりも大分早かった。
彼が申し込みをしていたので、フロントへとむかう。
それを後ろから見るともなく私は見ていた。
手続きを済ませ、部屋へと向かう。
フロントとは変わって年代を感じさせるような雰囲気だった。

部屋の中は…なるほど、値段相応の意味が分かった。
相応で十分な気はしたけどね。
彼はホテルの注意書きを見て、私はというとベッドにダイブ。
ホテルとかに行くと1度はやってみたいことなんだよね。
説明書を読んでいくうちに、普通のテレビは無料ということに彼が気がつく。
そうとわかればつけてみよう。
つけたテレビ画面に映ったのは「伊東家の食卓」だった。
一瞬時間までスリップしたのかと思ったけど、そんなことはない。
懐かしいなーと思いつつ、2人してテレビを見て話していた。
これが終わるのは9時。そうしたらお風呂に行こうか。
彼の提案を聞いて、私は頷いた…はずだったんだけど…




彼「ほら、行くぞ。」

私「んー…」



番組が終わり、彼がお風呂に行こうと促す。
おかしい、何かがおかしい。自分でもそう思っていた。
私は座っていた体制からすっかり寝転んでいた。
彼が隣に来る。そのまま一緒に寝転ぶ体制になっていた。
それでも起き上がる気は起きない。
彼はどうしよう、という顔をしながら私のほうへ近づく。
そのまま背中に手をまわして、私を起こそうとした。

…その時、ふと視線が交わる。
ドキンという音を聞いた瞬間、私の視界は彼だけをとらえていた。

(あまりにも恥ずかしいので中略)

唇を離すと、頭の中が非常にぼんやりして…なんか…変な気分。



彼「いこっか。」

私「うん…」



なんとも言えない気分のまま、私は起き上がった。
大浴場に行く準備をして部屋を出る。今度戻ってくる時はどうなるだろう…

一旦彼と別れ、大浴場へと向かう。
ここで説明書の注意書きの意味が分かった。
どうも女の人はわざわざ浴場の鍵を借りないといけないらしい。めんどくさいなぁ。
借りに行こうと思ったら、別の人たちが来たのでついでに入りました。(

…今思えば、よくあんな状態で大浴場にいけたもんだなぁ…

と、事情があることをわきまえて、お風呂からはなるべく早く上がった。
何が時間かかるかって、髪を乾かすのにかかっちゃうんですよね。
まぁそれはいつものことだし、仕方ないとして…

部屋にあった浴衣はサイズが合いそうになかったので、持ってきたジャージがパジャマ代わり。
多分彼は戻っているだろうな…少し小走りでエレベーターに向かった。
部屋の前に着くと、中からテレビの音が聞こえる。やっぱり先に着いてたみたい。
トントン、とドアをノックすると、彼が開けてくれた。もちろん彼は浴衣姿。

荷物の整理をして一段落着いた矢先に彼が握っているのは…ある飲み物。(←飲み物名を伏せる!)
テレビはニュース番組になっていて、それを見ながら2人して話してた。
後から聞いた話になるが、どうもこの時はハイペースで***を飲んだらしい。
あまり飲まないことも知っていたから、大丈夫かと思っていたら…案の定酔っていた。
明らかに雰囲気が違う。…***って人を変えるんデスネ。
意識はあるよって何度も繰り返すあたり、そういう問題ではない気がする。
というか何のアピールだよっwwと心内で思っていたことをここに記そうではないか。

彼が***を飲み終わった矢先、私は彼に近づいていた。
さっきのこともあるし、時間帯もそうだし、何より今日感じたぬくもりとは…一味違う。
寝ようか、と言って彼は電気を消した。空間の雰囲気が何かに侵されていく。
テレビの光だけがゆらゆらと揺れていた。

それは決して初めてのことじゃない。知っているからこそ、私はその意味を知っていた。
そうなるんじゃないかなとは分かっていた。状況的になったっておかしくはない。
むしろなったほうが健全なのかな…?そこは判断しかねるけれど。
ぼうっとした思考で彼を見つめる。なんだろう、この雰囲気は…
非常にいけないというか、いけなくないんだけど、うーん…
周りの空気に酔って思考能力の鈍っている状態でも、これは危ないとなぁいう判断は下していたと思う。
…いや、覚悟が出来ていない意味ではないんだよ。

一緒に泊まるって、やっぱり特別なことなんだよね。
特に相手は正真正銘男の人。襲われたって抵抗は出来ない。
別に襲われるのが好きなわけじゃないけど、それをひっくるめての覚悟は出来ている。
そんな話も何回か彼とした。彼も彼なりに考えてきてくれたと思う。



彼「俺男の子だよ。」

私「知ってるよ。」

彼「何するか分からないよ?やめとけ、な?」

私「それが…本音?」



なんだか悲しくなった。
私のために言ってくれてることが分かったのに、私はそうとしか思えなかった。申し訳ない。
彼は何度も何度も私に忠告してくれた。それが尚更苦しかったのかもしれない。
私とじゃ…駄目なんだろうか。なんだかそっちのほうに思考がとられてしまう。
そういうわけじゃないんだよ、と彼がすぐさま付け足す。



彼「嫌がるようなことはしたくないんだよ。」

私「うん…分かってる。分かってるから。」



なんか、上手く言葉にできない。
別に私が嫌いだからとか、そういうことで彼は注意しているわけじゃないのに。

それでも、雰囲気は悪いものではない。
言葉がなくなった空間で、2人は何を言うわけでもなく寄り添っていた。
そこに、大好きな人間の暖かさがある。ただそれだけなのに、こんなに満たされるのはどうしてだろう。
ふと視線を絡め、視線を外し、私は彼に近づき、彼は私を受け入れる。
これでいいのかもしれない。そう、私も思えるようになった。

その後、彼は私を上に乗せながら寝るという技を見せた…これにはびっくり。
苦笑しながらも、疲れちゃったよねって心の中で投げかける。
彼から離れ、自分は隣で横になる。おやすみ、の言葉を残して。


To Be Continue...


(一応付け足しておくと、別にえっちなことはしてませんので・・・非常に誤解を生む文章ですね^^; by影)





―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―* 


*ぼやき

誤解を招きやすい文章ですいませんね。どうも、香邊真香です。
このぼやきって後からとってつけてるという罠。いや、それだけです。

私もサイトのほうで掲載されている文章を見たんですが、
ところどころ都合により削られているんですね、知りませんでした。
まぁ著作権的な面から言えば…私が脅したら反抗できないのでしょう。
そこまでのものではないと思っているので、掲載等の判断は全て委託しておきます。
もし見たいという方がいたら私に言ってください。原文ごとあげます。(笑)
連絡手段ですか?この管理人さんに聞けばいいと思いますよ。
(と言ったら誰かさんに怒られそうかな。)

期間が空いてから会うと、本当に何もかもが初めてのような感じになるんです。
流石に半年のブランクはすごかったですねぇ…
でも、そのおかげで今の気持ちが保てていたりするんでしょうか…?
なんて考える今日この頃です。

ではでは、今回はこの辺でおさらばですっ。


続きはこちら↓

甘えたい時に甘えておけ、もったいないから(後編)

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