これだから人生は面白い(後編)


彼「どうする?」

私「どうしよっか。」

彼「ホテルの場所でも確認しに行く?」

私「そうしようか。」



出会ってからお決まりのようなやり取り。
駅構内でお土産を見ていたりしているのもそろそろ限界なので、外に出てみることとなった。
ここで自分が改札を抜ける際に新幹線の切符を取るのを忘れていたことが発覚。
人に話しかけるのが苦手な私は彼をパシリにつかっ…げふん、親切にも駅員さんに尋ねてくれた。
切符は無事私の手に戻る。ふぅ、ちょっとひやひやした。



私「こっちはあったかいんだねぇ…」



私の呼びかけに頷く彼。
すっかり春の陽気に包まれた新大阪駅の周辺。
仙台のほうでは肌寒いくらいだったのに、ここは下手すれば暑いくらいのいい天気だ。
ところどころ青い空に散らばる白い雲は、どことなくもう夏の到来が近いということを案じるかのような綺麗な風景を飾っている。
夏特有のじっとりとしたいやらしい暑さはなく、かと言って私の想像していたような柔らかい日差しともちょっと違う。
季節の移り変わりというものに出くわしているからなのだろうか。
それにしたって、まだやりきれないような時期である。

今回のプランはこうだ。
駅で待ち合わせして時間を潰し、駅近くのホテルに荷物を預ける。
少し休憩した後に大阪駅に行く。ご飯を食べたりデパートの中のお店を見たりして、この日は終了。
次の日の予定までは決めてない。そんなものだ(略)

ご察しの通りであるが、今はホテルにチェックインするまでの時間潰しということになる。
が、特に何かをして時間を潰す予定はない。
近くにそういう場所がないのが問題であるんだと思う。そうでもないか。

駅周辺にある放置自転車の山をかいくぐりながら、ホテルに続くであろう道を行く。
関西に来てまずびっくりしたのは気候の違い、そしてこの放置自転車の山、山、山。
いったいぜったいどうしてこんなに放置していくのだろう…
廃棄物的なアレなんでしょうか。でもまだまだ使えそうな雰囲気は大分漂っているというのに。
おまけにそのせいで道が狭いこと狭いこと。通常通れるはずの半分以下まで狭まっている。
処理するのにもこの量が膨大すぎて処理できないのだ、と彼は言う。
まぁ確かに、放置自転車よりもこの世の中をなんとかしてほしいものだとは思う…

新大阪駅の裏側に出たからなのか、人通りはあまりなく、都会と言う都会ではなかった。
(後にやっぱり都会なんだねという確証が持てたのはまた別のお話になるのだけれど。)
それでも駅を振り返ってみると、やっぱり都会だなぁとかしみじみと思ってしまう。



彼「調べてみたけど、ここら辺は何もないみたい。」

私「まぁ、なんとなく雰囲気で分かる気がする…」



ここまで何もない駅もどうなんだっていうくらい何もない。
彼が某サーチエンジンの機能を使って調べてくれたから間違いはないのだろう。
大きな道路沿いに歩いていく。マンションやら少ししゃれたお店やらが目に入ってくる。
今回泊まるホテルは数分で着いた。ちょっと分かりにくかった気がしなくもない。
残念ながらチェックインまではまだ1時間以上もあったため、とりあえず引き返す。
面白いものを見つけるとかそういう意図は全くなかったけれど、周辺を探索することに。
こうして2人で散歩することもあまりできないのだ。それだけで意味がある。

もと来た道を辿って、また放置自転車の中を進み、新たなルートへと足を運ぶ。
工事中のトンネルの中を通ったのだが、ひんやりとしてなかなか涼しかった。
もう涼しいと感じてしまうのが気持ちいい季節とは…同じ日本に住んでいるはずなのに、とか疑ったり何だり。

トンネルの向こうは…道が続いていました。別に某名作の世界を期待していたわけじゃないです。
若干緑が増えたような景色に、放置自転車…あぁ、なんかすごく台無しな気がしてならない…
放置禁止の看板がある目の前に大量にあるところがちょっと笑えた。
このぐらい思い切りがあると呆れを通りこしてよくやるね、と褒めてしまいそうな勢いである。

いい天気だなぁと呑気に語らいながら歩いていると、目の前に小さな公園が見えてきた。
素通りしてもっと歩いてもよかったのかもしれないけど、座ったほうが話は出来る。
という理由で寄ったかどうかは定かとしても、公園に足を踏み入れた。
公園と言ってもベンチがあるぐらいで、遊具らしいものは見当たらない。
右手のほうには子供たちが野球をしていた。元気でいいなぁ…
私たちはその逆にある木でできたベンチに腰掛けた。

座ったら座ったで、ぽかぽかしている陽気に包まれお昼寝ができそうだ。(しないけど)
ここで話すことといったらやっぱり本当に来てしまったということが多かった気がする。
何しろあまり計画を立てずに会いに来るということは前代未聞のことだったわけで。
意外にもなんとかなってしまうということだけはお互い実感したのである。日程さえ合えば。
(この後にいろいろやらかしてしまう発信源になることに関しては何も言うまい。)

面白かったのは、彼がわざわざ家から自分の高校のアルバムを持ってきていたことだった。
少しはネタになるんじゃないかという考えからだったらしい。
むしろ、彼の荷物の重さの半分以上がアルバムであることに私は笑えたけど…ねw
せっかくなので2人で広げて思い出を分け合っていた。(?)
と言っても知人などいるわけもなかったから、彼の説明を聞きつつという形だけどね。
普通の高校のアルバムの実態というのはこういうものなのか…とも知った。
いつか私の高校のアルバムを見せる時、彼はどういう反応をするだろう…
(だんだんと自分の高校ってこんなにもカオスなんだということが恥ずかしくなった。)

さて、まさかアルバムで1時間も潰れたわけがありません。
そこまで口が楽しく動いていたわけではないけれど、不思議と気まずい雰囲気ではなかった。
公園に来た犬を見てかわいいなぁなんて何度もしつこく言ってみたり。
(なでてくればいいじゃない、という彼に、そんな度胸はないと言い張る私。)
なにやら名前の分からないボールを使ったスポーツをし始めるお兄さんとお姉さんを見たり。
(あれ大学のサークルで出来ないかな、なんて彼が言っていた。)
この空間に体を預けているだけでも大分心地よいので、特に困ることはなかった。(私だけ?)

そうやって過ごしていると、あっという間にチェックインができる時間に。
さっさと荷物を置こうかと言って立ち上がり、来た道を戻ってホテルへと向かった。
前述にはなかったけれど、駅前にはちょっとした信号がある。
地元の人だったら突っ切るのだろうけど、それが許せない私に彼は付き添ってくれた。
こういう時って行動しにくいんじゃないのかな、という疑問が出る。どうなんですかね。

先ほど確認したホテルに入り、彼が受付を済ませてくれた。
関係のないことだけれど、宿泊するホテルの予約は全て彼がしてくれている。
個人情報がなんたらとか言われたっけか。まぁどうせ成り行きでそうなったんだけど。
早々に受付を済ませて、鍵を受け取った彼と一緒に部屋へと向かう。

部屋に入って荷物を下ろす。ここもまずまず値段相応といったところ。
だが電子レンジがあるところがやけに笑えてしまう。これだけ新しい気がするし。
(使って見たいねー、なんていいつつ結局のところまだ使えていないという…)
時間にしてはまだ3時を回ったところである。
このまま駅に出てもいいのだけれど、流れ的にはちょっと休憩、らしい。

お決まりにテレビをつけて、チャンネルをいじり回す。
なんだかよくわからないけど、漫才をやっていたのでそこに合わせる。少しは見る。
関西だとやっぱりこういう番組が多いのかなぁ…偏見的にそういうイメージなんです。
まぁテレビも見ない私にそんなことを力説されたって知らないけどさ。

ベッドの上で座って鑑賞していると、2人してなんだか変な雰囲気に。
最初はたわいのない雑談をしながら少し体が触れる程度だった。
そのうちにエスカレート(?)して、彼が後ろから私に抱きつくような格好、いわば背もたれ的な?
(彼はこの状況がすっかりお気に入りらしいです。)


 こうなってしまうと、もうつけたテレビの意味などどこにも存在しなくなってしまう。


そのうちに我慢できなくなって、私は彼に顔を向ける。近距離でお互いの顔を見る。
じっと、彼の眼を見据えて目で何かものを言ってみようとする。
どうも私には目力というものがあるらしい。彼曰く、である。
もちろん目で言葉のような機能を果たしはしないのだが、何かを言ってるようには見えるみたいだ。
言葉で言うのも恥ずかしいので、ここはちょっと目を使って…

結果から言うと、多分成功した。というよりも使う前に行動に出たというほうが早い。
額と額がぶつかる距離までいってしまったら、体のほうが先に動いてしまうというものだ。
彼の肩に軽く手をおいて、そのまま顔をさらに接近させた。
軽く唇が触れたところで離して視線をそらす。やっぱりちょっと恥ずかしいものなのです。
彼の胸あたりに顔を押し付けてみる。それが自然であるかのように、彼は私を抱きしめた。

再び顔を上げる。それを合図としてか、彼と目が合う。自分の鼓動が聞こえた。



私(こんな時どうすれば…いや、したいことはあるんだけど…)



状況からすれば時間帯は違うとはいえ、3月の時と一緒なわけであって。
そりゃあ意識しないと言えば嘘になってしまうのだろう。
まぁそっちの方向(?)に進む気満々というわけではなく、
ただ純粋に彼の底知れないところまで触れてみたいという激情が少なからずあった。
そこに触れてもいいのか悪いのか、というところまでも分からない。

しばらく焦点の合わない彼の顔をぼんやりと見つめていた。
コツン、と額が当たって、本格的に視界が彼で埋まる。
言葉にならない感情を描写するのが1番難しいことなのだ。
ここら辺は上手く書けないであろうから、皆さんが随時納得していってほしい。

少しくっついて少し離れて、を繰り返し、今度はお互いが歩み寄って唇に触れた。
そして、その時はなんとなくであろうが予想は出来たのであろう。
唇を割って入ってくる舌にあまり戸惑うことはしなかった。
こういうキス(ごまかした)をするのもあまり慣れてはいないのだけれど、
どっちかって言えばこっちのほうが彼の核心により近い気はする。当たり前か。

こんなのを何回も繰り返しているうちに、時刻は夕方へと早々にシフトした。
何時もより時間の流れが早い…のはいつものことなんで言及しないでおくとしよう。
出かけ際にもう1回だけせがんで、ベッドから起き上がる。
ねだるとその通りにやってくれるから嬉しいね。(何
夕ご飯も食べなければならないし、そろそろ大阪駅に繰り出すことになった。

新大阪駅というのはほぼ新幹線のための駅と言っていいらしい。(彼曰く)
まぁなんとなくそれは大阪駅に着いて実感した。…ナニコノヒトノオオサ。
そりゃあ新幹線なんて遠くから来る人専用になってしまうだろうから、
実際地元の人たちが使うのはこの駅ということになるのだろう。
数分しか違わないのになぁ…

人ごみの中を流れるように歩いていく。
自然と彼は手を差し出してくれて、私はその手をとった。
私がこういう都会染みた場所はあまり好きではないことを彼は知っていたし、
人の行き交いも激しい中だったから、はぐれる可能性は無きにしもあらずであった。
改札を抜けても目立つ人ごみ。人って、こんなにいたんだなぁ。

駅構内にある本屋さんを見て、ここであの人が例の本を買ったんだよと彼が言う。
そうなんだ、と意外とひろそうなその本屋さんを眺めながら、私は答えた。
あの人というのは最初のほうに出てきたまさにその人で、
例の本というのは、彼が3月に来た時に一緒に渡してくれた本だった。
別に誕生日でもなんでもなかったけれど、結果的に貰う形になってしまったのだ。
あの人らしいな、なんて思って読んでみた。あれもなかなか勉強になったから。
(少し覗いてみたけど、よくわからなかったと彼が言ってた気がする。)

そんな話をしたから、暇つぶしがてら本屋さんの中を物色することに。
特にお目当ての本があるわけではなかったけれど、記念に…?
本屋自体は広かった印象を受けたけれど、立ち読みされると通れるスペースがなかった。
移動はちょっと大変で、見回ったというよりかは歩き回ったという感じが妥当。
お目当てがあったらまた違ったんだろうなぁ…なんて思ってみたり。

寄り道もそこそこ、彼に手を引かれて駅前へと出てみる。
おぉ、ここが大阪か。…なんて感動する場面ではないはずである。本当はネ。
大阪に来るのは高校2年生以来と、あまり古い記憶ではない。
その時に何かやったかと言われれば…何だろうか。
古いお寺を見たり、テーマパークに行ったりだとか、ありふれたものだった。
夏はすごく暑いことも体感したし、電車の路線図を見て目が回った。
そんな印象は今でも十二分に健在である。

彼はなるべく人の通らないルートを考えようとしてくれていた。
そんなの大丈夫だよ、と言ってもどことなく心配そうに私を見る。
確かに1人で歩くのは辛い状況だけれど、誰かが傍にいるなら大丈夫。


 その誰かさんも、私がいてほしい人だから心配はない。


…なんてことは言わなかったけどね。

少し歩くと、信号を境にして大きなデパートが見えた。目的地らしい。
見るからに都会っぽい建物にちょっと感動を覚えた。
その上には…何故か観覧車。いったいどうしてこんなところに…
ビルの上に観覧車とは大胆な発想だなぁと感じずにはいられない。
暗くなった時のことを考えると、きっと奇麗なんだろうなぁって思ってた。
3月に彼が来てくれたあの日、2人で夜景を見に行った時のことを思い出す。
あれも奇麗だったよなぁ、なんてしみじみと思い出に浸っていた。

信号を渡り、デパートの中へ入るとつりさげられている展示物に圧巻。
なんか、観覧車といいこれといい、ものすごいなぁ…
こういう時にどういう言葉を使ったらいいのかはよく分からないけど…
外見通り、結構な高さのあるビルだ。
展示物が中心となって、その上を見上げるとその高さがよく分かる。

適当に上へとあがりながら、いろいろなお店を見て回った。
特に買うものないけどね。見て回っているといったら怪しいけどね。
あてもなくぶらぶらしていても時間が潰れる相手だから、していることなんてどうでもいいのだ。
(別に意味のあることはあることで面白いからいいのだ。)
ここら辺はあまり書くこともなさそうなので次に行ってみよう。

やがてお店を回っていたところで、レストラン街(?)に辿り着いた。
夜ご飯にはちょっと早い気もするけれど、混んでくるとまずいので何か食べることに。
元々2人とも優柔不断なので、こういう時はちょっと時間がかかってしまう。
なんでもいいっていう意見を重ねたら駄目なんですね。(
今回はちょっと興味をくすぐられた石焼チャーハンのお店へと入ってみた。
(大体興味か値段かで決まってしまうものである。)

お店に入って、私は石焼チャーハンを、彼はちゃんぽん(だったっけか?)を頼む。
どんなものなのかちょっと期待していたけれど、どうってことはない。
入れ物のお陰で最後まで熱々で食べれますよというようなものだった。
彼がちょっと食べるのに苦戦していて苦笑い。そりゃそうだ、熱いんだもの。

夜ご飯もおいしくいただいたところで一息つき、お店を後にする。
上のほうにプリクラを取れるところがあるからいってみようか、という彼の提案にのることにした。
その後観覧車でも乗ろうか、なんて言ってくれた。ちょっとわくわく。
(まぁ観覧車の話はもっと前から出ていたわけですがね。)

はたまた上へと行ってみると、うってかわった雰囲気のゲームセンターが現れた。
こういう大きなビルにはつきものなんでしょうね。知りませんけれど。
クレーンゲームとか絶対取れないよなぁとか話してた。
元来、お互いゲームセンターにはあまり行かないタイプなのでね。

ゲーム特有の音が交差する空間を抜けると、プリクラの機械がいっぱいあるところに出た。
赤外線で画像をもらえるやつにしようということで、機種はすぐに選べた(はず)。
最近の機種というのもいろいろあるんだなぁとか思ってた。
今回のは上からアングルで撮ってくれるもので、2人して驚いてた。
プリクラを撮るのもまだまだ慣れることではないらしい。
落書きもほとんどしないため、今回も例外に漏れずにあまり書かなかった。

プリクラを撮り終え、丁度外も真っ暗に近くなってきた頃だった。
そろそろ行こうかということになって、観覧車の乗れる場所まで行ってみる。
思いのほかすいてました。あまり繁盛してないのかな…
チケットを購入し、何故だか知らないけど写真を撮られる。
多分買わせられるものかぁなんて思った。結果買わないけどね。

係員の誘導にしたがって、観覧車に乗り込む。ここからは約15分間のお楽しみだ。
ゆっくりと浮上していく体。私たちはどんどんと夜の街へと繰り出していく。
視界に広がる景色は本当に奇麗だった。あの時見た夜景のようだった。
誰にも見られないとわかると、彼がデジカメを持って私の隣へ。
そうやってあらゆる方向から写真を収めていた。
親切にも壁側にどういうものが見えるのかが書いてあったのに、
ど素人の私にはあまり理解できずに終わってしまった気がする。
(彼には分かるらしい。なんだろう、この差は。)

やがてデジカメのシャッター音も消え、しばし団らん。
あまりにもムードが良すぎて逆に焦る。こんな場面に遭遇したことなかったもんなぁ…
なんて考えるけど、誰にも見られないとわかったらそりゃ寄り添ってしまうものだ。
彼のほうにもたれかかると、背中に手を回して肩を抱いてくれた。



彼「てっぺんまできたねぇ。(で、どうしようか?)」

私「そうだねぇ。(で、どうするの?)」



よくありがちな展開であることはお互い認識しているのだろう。
なんとなくそれを意識してしまったせいもあって、私は彼に顔を向けた。
彼も彼できっと気がついたのだろう。そのまま顔を近づけてくれ、私たちはキスをした。
観覧車の中でキス、しかも死ぬほどロマンティックなこの夜景の中で…
こういうのも嫌いじゃない。好きだけど、なんか慣れないよなぁなんて思った。
15分間なんてあっという間。何周でもしてられたと思う。

デパートを出たのは7時を過ぎていた頃だったかな。
相変わらず人の多い駅前を歩いて、電車に乗り、駅に着く。
途中で彼がコンビニに寄ろうかと言ってきた。やっぱりお酒飲むのは恒例なんだね。
近くのコンビニで済ますつもりが、ちょっと足を運んだところまで行くことになる。
(ここら辺の事情はべらべらしゃべるわけにもいかない。)
ここでは上手くいったので、2人並んでホテルへと向かった。

あまり充実したことはしてないのに、こんなにも楽しくなるのは魔法なんだろうなぁ。
人通りのほとんどない道を手を繋いで歩くのだって、大したことではないのに。
ふいに彼が大丈夫?って何度も聞いてくれた。私の歩速が遅いのを気にかけたのだ。



彼「大丈夫?疲れてる?」

私「大丈夫だよ。」

彼「本当かなぁ…ホテルまで運ぼうか?」

私「いやいやw」



満更冗談でもないことを言うからちょっと恥ずかしい。
本当に少しぐらい運んでもらおうかな、なんて思っちゃった瞬間も…あったね。

そんなことはなく、無事に自分の足でホテルの部屋に戻ってこれました。
お風呂に入る前にちょっと一息。テレビをつける。何やってたっけかな。
流れ的には前述のチェックインと同じ雰囲気…しかも今は夜…
…いけないいけないっ。
そういう意識が頭にあるものの、これが本能というべきものなんだろうか…
だんだんと抑制という理性が融けていく感じがした。

落ち着こう、と言ったかはしらないけど、順番にお風呂に入る。
彼が最初で私が後。ということは、きっと彼が抑制したんだろうなぁ。
さぁ、お風呂にも入って彼はお酒を飲んでいて…展開は予想できた。
どうしてこうなってしまうのかは分からない。
まぁ…それも今更だよね?
ホテルについてる浴衣を身につけ、私はお風呂から上がった。


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・


(ここからの文章は中略。詳しくは管理人さんのほうh(蹴)


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・



彼「またぎりぎりだったじゃん。」

私「さぁ、誰のせいだか…」



実は起床したのが5時。生活習慣はきちんと身についているものらしい。
ちなみにチェックアウトの時刻は10時前。
…もう何も言わないことに決めました。省略でいいですよね。(蹴

次の日が授業ってこともあって、私が乗る帰りの新幹線は13時半出発。
時間にしたらあと3時間半だった。ちょっと憂鬱になる。
はっきりとどうしようかとは話していなかったが、彼の地元にあるデパートに行くことになった。
地元って聞くとやっぱり興味が湧いてきてしまうものなんだと思う。
いつかは家にまで行くのかな…なんて思っちゃったりしてね。

新大阪駅から電車に乗って、そのまま彼の地元へとやってきた。
この日は一段と暑いように感じられた。というのも私の服装の問題であろう。
仙台のほうは春物のコートを着て丁度いいぐらいであった。
もちろんコートを手で持つわけにはいかないから、着こんでいる。
だけど状況を考えてみるに、コートなんて絶対いらない。暑いもん。
ここまで気温差が開くと服装も大変なんだなと思った。

駅からデパートまではちょっと外を歩かなければならなくって、
嫌でも日差しを全面的に浴びる羽目になってしまった。
うぅ、これは夏が来る前に日焼けしそうだ…どうでもいいけどさ。
自転車置き場を通る際、彼が自分の出身高校のステッカーを捜していた。
あってもおかしくはない。というかあった気がするよ。

早々にデパートに入るとここは涼しい。よかった。
特に何をするわけでもなくまたもやここでもぶらぶらっとしていた。
気持ちの憂鬱さに加えて、若干の疲労感もぬぐえない。
少し歩いただけで休憩するぐらいであるから、一体何のためにここに来たのか分からなくなる。
途中歩いている時に彼の部活時代の後輩とすれ違った。(・∀・)
特に何か言われるわけでもなく、お互い会釈で済みましたけどね。

お別れの時間が迫ってくる中、ちょっと早いけどご飯を食べることに。
(どうせ朝食べてないからね。)
何食べようか、なんていつも通りの会話を展開。
せっかく大阪に来たんだし、お好み焼きでも食べていったら?なんていう提案が出る。
確かに…名物ぐらい食べて帰ったって何も悪いことはない。お店は珍しく早々に決まった。

お店に入ってお好み焼き以外にも、ちょこちょこと頼んでみた。
(自分の大学の呼び方をする食べ物に巡り合ってちょっと感動した。)
出てきたものを大体半分こにして食べる。
頼んだものの量的に少し少ないかな、と思っていたけど、意外とお腹にたまったのにびっくりした。

名物をおいしくいただいたところで、すぐにはお店を出ずにちょっと休憩。
この時から、彼の顔の雲行きがものすごく怪しくなった。
今まで別れを惜しんでくれたことはあっても、それを全面的に顔に出すことはなかったはずなのに、
今回ばかりはどうしてか、憂鬱なことが誰が見ても明らかに分かってしまうぐらいだった。
大丈夫って聞いてもあまりいい返事が返ってこない。本気で心配になってしまった。

実情的には、去る方よりも去られる方が辛いのかもしれない。
その時去る方を経験してみて、なんとなくそうなんじゃないかなって思い始めた。
去る方のほうが覚悟をしやすい感じがどうしてもある。行動的な意味で。
1、2回目と私のほうが余裕がなかったのに、3回目にして逆転してしまった感じがある。

時間はもう1時間もなかった。2人でお店を出て、駅へと向かう。
ちょっとしかいれなかった彼の地元だったけど、あまり寂しくはなかった。
なんとなくまた来ようなんていう気がしていたのは気のせいじゃない。
何をしにくるのかと言われたら言葉に詰まってしまうところだけれど。

再びちょっときつい日差しを浴び、電車へと乗り込んだ。
ここで乗ったのは2人がけの椅子のあるタイプのもの。
彼は通学の時に乗っているそうで、こうやって座れて嬉しいと言われた。
車内で何故か彼が写真を撮ろうと言いだした。
もちろん突発的なことではなくって、前々から言っていたこと。
なかなか機会がなくって(というか忘れてて)撮れなかったので、今撮ろうということだ。
正直電車の中で撮るのもどうなんだろう、なんて疑問が頭をかすったが気にしないで撮ることに。
プリクラと違って若干恥ずかしい。のは気のせい…なのかな。

電車は思ったよりも早く京都に到着した。
帰りの新幹線は京都から乗ることにしておいたのだ。
関西の移動のしやすさには毎度のことながら驚く。これも地域ギャップであろうか…

京都駅もそれなりに人はいた。駅だけ見ればやっぱりここも都会な気がしてくる。
新幹線の時間まではあと30分ぐらい。
あてもなく駅周辺をぶらぶらすることになった。いてもたってもいられないとはこのことなのかもしんない。
彼の顔の雲行きはだんだんと雨模様になっていった。泣いているという意味ではない。
もう歩く気力すら感じられなくなってしまい、今度こそ本当に心配になってくる。
壁によりかかりながら、彼の顔を眺める。なんか、言葉が一気に吹き飛んでしまった。
お別れの寂しさより彼の身を案じる気持ちのほうが強かった時もあった。
それでも彼は行ってくれと言った。それが私たちの約束。当たり前のことだね。


 時間は残酷にも過ぎてしまうのは分かっている。


重い体をなんとか動かし、中央改札に向かった。ここで、お別れなんだ…
付近の柱によりかかって、お礼の言葉を交わし合う。
突然の計画だったけど、やっぱりこうやって会えてよかったよって。
これで夏まで頑張れそうだ、と言葉では前向きだった。
しかしやっぱり別れの辛さというものは浮き彫りになってしまうのであろう。
だんだんと彼を心配する気持ちが別れの辛さで染まっていく。
乗車時間まであと数分になった。



私「じゃあ、行くよ。」

彼「うん。」



その日最後の言葉を交わし、私は中央改札を抜けていく。途端に目が熱くなるのを感じた。
今回ばかりは彼の目の前で泣くことを我慢していたけれど、こらえきれなかったのは事実。
途中何度も振り返りたいと強く思ったけど、そうしたら足が止まってしまいそうだったので抑える。
やがてエスカレーターを登ってもう彼の視界から見えなくなった瞬間、涙が溢れた。
周りの人たちからはどう思われてたのかなんて考える余裕もなく、ただひたすらにハンカチで涙を拭うしかなかった。

ホームに帰りの新幹線がやってきた。涙目でチケットを見て指定席を確認、無心で乗りこむ。
新幹線は意外に早く京都を去ってしまった。
動き出した瞬間、またもや涙腺が緩んでハンカチの手を借りることに。
本当に彼のところから去ってしまったという実感が何より辛かった。
涙が止まった後も、ぼんやりと外を眺めて心ここにあらずといった感じで時間をつぶした。
東京から乗り換える頃には落ち着いてきていて、仙台に着くころには顔もそんなに酷くなくなってたと思う。
(というのは私の強がりであることを理解してください。)

何が原因なのかはよく分からないけど、今回は前とは違う気持ちが生まれていた。
次会うまでまで頑張れそうという言葉に力があったのは、今回が初めてだったかもしれない。



私「また、会おうね。」



仙台のまだ春らしい空に向かって、そんな言葉を投げかけた。









次回予告的なもの。


            ―「すごい展開になってきたねぇ。」

  「暑い暑い…」

                   ―「また会えるよ。」


―真夏の日差しが、再び私を迎えてくれた。




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*ぼやき

皆さんおばんです、香邊真香です。方言で挨拶してみました。
さてさて、私の執筆が遅いせいでようやく3回目の出会いについて書き終えました。
執筆している時期から既に4ヶ月経っているわけですから、記憶も曖昧でなかなか進まず…
…9月一杯でなんとか4回目までは書いちゃいたいなぁとか思ってみたり。

今回は私が初めて彼に会いに大阪まで行ってみたわけですが…
今考えるとすごい無茶してますね。本当に。(苦笑)
これも若いうちだけのいい思い出なんでしょうね、おいら若くないけどさ…(遠い目)

2日目の昼食で私の大学名がバレそうですけど気にしない方向でいきたいと思います。
あんまり隠すことでもないかな、なんて思っているのかは知りませんけどね。
事実を書いたらこうなってしまったということにしておいてください…

さて、4回目の前にネットのことについて記述しておかないと…
ではでは、次回またお会いできることを願ってます。



続きはこちら↓

無茶してもやりたいことがある(前編)

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